Starry Blaze

DragonQuestV > story02:オレの親友 グランバニア王

その日、10年ぶりに嫁さんと再会したアイツが俺を訪ねてやってきた。
マリアの兄上の最期を伝えに、そして、これから魔界へお袋さんを助けに向かうと伝えに。

「ていうか、そんな大変なことやらかそうってのに、どーしてオマエはそんなに落ち着いていられるワケ?」

俺は目の前で優雅にお茶を飲んでいるグランバニア王、俺の親友でもあるイザナをねめつけた。
いや、コイツがマイペースだってことは、昔からわかってるさ。
しかし、今こうしている間にも魔王の力は強大になっているというのがコイツ本人の言い分だ。
それならさっさとやるべきことはやらなければいけないんじゃないのか?

「ちょっと休みたい気にもなるさ。さっき、ようやくシーザーが仲間になってくれたんだよ。あ、シーザーってのはグレイトドラゴンのことね。魔界で初めて見たとき、仲間になってくれたら絶対大きな戦力になると思ってさ。粘ってねばって……もう何匹虐殺したかわからないよ」

「……魔物を仲間にする時は愛をもって仲間にする、んじゃなかったか? その言い方だと、全然愛情感じられないぞ」

「えー? そう?」

「そうだよ……って、オイ! オマエ、今魔界って……」

「うん、言ったけど?」

「今から魔界にお袋さん助けに行くんだろ!?」

「魔界にはもう何回も行ってるよ。ルーラで行ったり来たりできるから」

「〜〜〜〜〜〜」

俺はてっきり、魔界ってのは行ったきり戻って来れない恐ろしい場所なんだろうとか、もしかしたら今生の別れになるかもしれないとか、そんなことを考えて、どうせ俺が止めたって魔界にいくとは思うが、どんな顔してコイツを見送ればいいんだ――なんて考えてたってのに!
コイツのマイペースさには慣れたつもりだが、離れていた分忘れていたことも多かったようだと、俺は今さらながらに思った。

「――んで? 他に何か用でもあんのか?」

「あ、酷いなー、その言い方。ヘンリーに会いたくて来たってのに。ホントはもっと会いに来たいんだけどねー。それもなかなか思い通りにならなくて」

「そりゃそうだろ。オマエにはやるべきことが山ほどあるんだろ」

「あ、そっちの心配はいらないよ。魔王倒すにしても、レベルは大分高くなったから。シーザーのおかげだよ。魔界でどれだけ粘ったか……まぁ、ゴールデンゴーレムも大量に狩れたし、軍資金も結構潤ってるんだ♪」

「…………」

「ラインハットになかなか来られないのはさー。ナユタとセツナが嫌がるんだよ。たぶん、コリンズくんと反りが合わないみたいで」

「コリンズが? アレはアレだろ。好きな子にほど意地悪したくなるっていう」

そう、俺が昔コイツにやったことだ。
――それを口にしたりはしないが。

俺の息子コリンズが、イザナの娘のセツナに惚れてるってのはよく分かる。
我が息子ながら、よくそこまで顔に出せるな、と溜息が出るほどだ。

イザナの息子ナユタのことも、コリンズは気に入っているはずだ。
そもそも同年代の子どもと接する機会というものがほとんどないコリンズだから。
同年代で同性の友人ができて嬉しくないはずが無いのだが。

それでもナユタに対して偉そうな態度で接してしまうのは、セツナがナユタにべったりでおもしろくないからだろう。
ナユタとは友達になりたいと思っていても、そう接することができない自分に、コリンズにしてはらしくなく悩んでいるようだ。
そこは父親として相談に乗ってやってもいいのだが、コリンズが自分から相談を持ちかけてこないからには、こちらから働きかけることは何も無い。
アイツはアイツでプライドが高いからな。

「今も意地悪されてなきゃいいけど。これ以上2人のコリンズくんに対する印象が悪くなったりしたら、僕1人で来るハメになっちゃう」

双子たちは今、コリンズの部屋で遊んでいるはずなのだが。
どうせまた、手の込んだイタズラでも仕込んであるに違いない。
初めて顔を合わせた時のイタズラは……俺がイザナに対して昔やった(あまりいい思い出ではない)イタズラと同じものだったらしく、その場に居合わせたイザナがすんなりと見破ったようだが。
グランバニアでもイタズラで走り回っているというナユタには、見破られるのも時間の問題だろう。
それに懲りて、誰に対してイタズラするのも控えてもらいたいものなのだがな。

「別にいいんじゃねぇの?」

そんなことを考えていたから、俺の返事はかなりどーでもいいようなものになっていた。
というか、俺としてはむしろその方が歓迎っていうか?
……いや、ガキはガキ同士遊ばせておいた方が、こっちはこっちで集中できるんだけどな。――って、俺は何を考えてる!?

「子ども達を無理に連れてくる必要はねぇって。1人で来るのがいやならビアンカさんと来ればいいじゃねぇか」

「マリアとの話が長くなって、こっちはこっちで中々帰れなくなるよ?」

「泊まってきゃいいじゃねぇか。何を遠慮する必要がある?」

奥さんたちは奥さんたちで盛り上がってもらえばいい。
コッチはこっちで、一日中だってイザナの顔を眺めて話ができる――って、だぁーッ!!だから俺は一体なななな何を……!

「ヘンリー? さっきから、やけにおもしろい身悶え方してるけど。何かあった?」

「い、いや。俺のことは気にするな」

「そう? それならいいけどさ。――ヘンリーの誘いはありがたいんだけど。こっちは泊まっていける程ヒマじゃないんだよね。さっさと魔王倒しに行かなきゃいけないし」

「って、オマエ……さっきと言ってること違うぞ」

「あれ、そうだった? 僕は確か、母さんを助けに魔界へ行くってことを話に来たと思うけど? 母さんを助けるイコール魔王を倒しに行く、だよ。母さんは魔王の手にあるみたいだから」

「だったらさっさと行けよ。こうしてる間にも、魔王の力は強大になってるんだろ?」

「あ、冷たいなーその言い方。僕はヘンリーに逢いたくて来たってのに」

「……おい、それじゃまた同じ会話の繰り返しだぞ」



そんなこんなで。
俺の親友イザナは、俺の心を掻き乱しまくって魔界へ出発していった。
それはもう、ちょっとピクニックに行ってくるよ、みたいなノリで。

ラインハットに残ったのはもちろん、憔悴しきった俺と、がっくりと肩を落としたコリンズだった。

「また嫌われちゃったのか? そうだな……セツナちゃんには頼もしい勇者サマがついてるみたいだもんな。今度は別の手法で攻めてみろ。優しくしてみるとか。とりあえず今回犯した非礼は手紙ででも謝っておけ。そう、アイツらが魔王を倒して帰ってくる頃には――グランバニアに届いてるだろ」

良い交友関係を築き、保つために。
お互いがんばろう、と呟いたのは心の中で。
俺の場合、いろいろな意味が込められすぎていて。
我が子には口が裂けても言えるもんじゃない。




何故にギャグ調……

ちなみにグレイトドラゴン大虐殺は実話です。仲間になるまで…一体何匹のグレイトドラゴンが犠牲になったか。
ですから、この話の坊ちゃんの、笑ってバッサリ殺っちゃったv みたいな部分は、雪咲が操作してた坊ちゃんそのものなんですよね。…雪咲はこんな天然じゃないですが(多分 / 笑)